2025.04
SOCIAL
GOOD RECYCLE
アルミが再生する、
資源と地域の可能性



静岡銀行では、SDGsの実現や
サステナビリティ貢献に取り組む地域企業を
支援する目的で
さまざまな融資を行う
「サステナブルファイナンス」を
実施しています。
その中で静岡県内初となる
「サステナビリティ・リンク・ローン」を
締結した
山一金属株式会社の大賀専務に
お話を伺い、脱炭素経営への取り組みと
ファイナンスとの関係、
そして今後の展望に
ついて語っていただきました。
サステナブルファイナンスの推進
持続可能な地域社会づくりに資する金融
サービスとして静岡銀行が取り組む
サステナブルファイナンス。2021年には
「サステナブルファイナンス目標」を定め、
2030年度までに累計2兆円の融資を
実行する目標を掲げています。


特別対談
地域の未来を切り拓く、
ひとつのチーム。


PROFILE

専務取締役

コーポレートサポート部
課長
1分でも、1秒でも早く―
加速する脱炭素化への
意志と改革

大賀氏
2015年のSDGs以降、世の中のムードが変わり続ける中で、アルミ業界ではおそらく新地金ではなくリサイクルされたアルミがどんどん注目されるだろうとまず感じ取ったんです。

山崎
元々アルミのリサイクル自体が、昨今求められるいわゆるサーキュラーエコノミーの重要な役割を担う事業だったりもしますよね。

大賀氏
そうですね。ただ、そのためにはやはり客観性がないと皆さまに「いいアルミ」と思っていただけない。
そこでまず2019年頃から第三者機関に二酸化炭素の排出量の測定を依頼して可視化を始めたのが脱炭素経営の第一歩でした。「必ず必要なものは先んじてやる」の精神で、1分でも1秒でも早くという気持ちでずっと取り組んでいます。

山崎
特に山一金属さんの場合は、同じリサイクル事業を展開する企業さんの中でも自社の強みを自分たちでいち早く分析してアクションにつなげる部分が他社との大きな差別化要因になっていますよね。
「求められるアルミ」のためには
客観性が必要不可欠だったんです。

自社の強みをいち早く分析する。
そこが山一金属さんの優位性でした。

モノより「コト」を寄贈する
静岡県内初の寄贈型PIF

山崎
その中で当行がご提案させていただいたのが「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」ですね。
これはいわゆる既存のコべナンツローン(特約付きローン)が財務を対象としているのに対して、「CO2排出量を減らす」「環境に優しい製品の販売比率を増やす」といった環境や社会に対する貢献度を目標に定めていただいて、その達成状況に応じて金利を上げ下げして支援を行う融資商品です。



大賀氏
これまでの弊社の取り組みや実績を評価いただいて融資に至ったわけですが、いざ見渡すと国内のスクラップマーケットが大きく変わろうとしていたんです。
これまでは国内で資源を調達し合っていたものが、海外から国内最大手の10倍
ほどの規模の大会社が参入して、日本のスクラップを買い上げる、という状況になってきた。つまり私たちの競合相手が国内から海外最大手まで広がったんです。
その時に、自分たちの会社全体の強みをもっと確立していかないと5年先、10年先、会社が存続できるのかという強い危機感を持つに至ったんです。


山崎
SSLを通じて、環境面だけでなく社会面への貢献や取り組みの重要性を再認識していただけたということですよね。そうした流れもあって、当行から「寄贈型ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)」という融資もご提案させていただきました。PIFというのはお客さまの事業活動において、環境・社会・経済という3つの視点からもたらすインパクトを分析して、それを更に伸ばす目標(KPI)を設定していただき、その取り組みを私たちが伴走支援する融資商品です。
そうしたご提案に対して山一金属さんとしては「せっかくだからユニークなことに挑戦してみたい」という思いがおありだったんですよね。

大賀氏
そうですね。PIFにおいても、KPIが達成できるということは地域の皆様のご協力あってのことだと。そのため、KPI達成の暁には地域に何か感謝の気持ちを伝えられるような形にしたいという強い思いがありました。
ポジティブ・インパクト・
ファイナンス(PIF)スキーム図


山崎
その思いを受けて、これも静岡県内初となる寄贈型PIFということになりました。KPIの達成状況に応じて山一金属さんから地域の方々に寄贈を行う、という仕組みですね。

大賀氏
寄贈の内容は山崎さんと何度も話し合いましたよね。やるなら本当に喜んでいただけるものを、確実に誰かのためになるものをやりましょう、ということで、これは教育しかないだろう、という結論に至ったんです。
製品や物品(モノ)もいいけれど、体験やイベント(コト)を寄贈する取り組みにできないか、と。

企業と銀行のシナジーで
地域全体をサステナブルに

大賀氏
結果的にKPIが達成できたことで、地域の高校生の夢やアイデアを企業が支援する「夢実現パートナーシップ」というプレゼンテーションコンテストを開催するに至りました。
先日ようやく1年がかりのプロジェクトを終えたばかりなんですが、我々としても本気で学生の方々に伴走できたのではないかと。

山崎
前回が第1回で、第2回のエントリー校は倍以上にまで増えたんですよね。

大賀氏
そうなんです。前回は4校だったものが第2回では10校にまで増えていて。少しずつ地域に浸透していっているという手応えがあります。

山崎
しずおかフィナンシャルグループとしても2023年度からスタートした中期経営計画の中で、こうした未来世代の方々を新たなステークホルダーとして位置づけているんです。
次世代を担う世代の方々含めて全ステークホルダーが幸せでいられることこそがウェルビーイングであると。
そのため、今回の寄贈の取り組みを通じた山一金属さんの思いには100%共感しますし、同じ「ありたい姿」を目指して伴走支援させていただけることは非常に感無量に思いますね。



大賀氏
今回SLLやPIFといった非常にわかりやすいローンをご提案いただけて、今後はやはり、我々の製品に対して、社会における客観性を一緒につくっていく、ブランディング化していくひとつのチームとして取り組めていけたら、という思いがあります。

山崎
おっしゃるように、地域全体の持続性を高めていくには、1社の売上や企業価値を高めることはもちろん、その企業の取り組みがいかに社会に貢献できているか、その両立だという風に思うんです。地域だけではなく社会としてどんなことが求められているのか、その情報をキャッチしてお客さまと共有し、サステナビリティ経営へといざなっていく。それが金融機関である我々としての使命だと考えていますね。



企業と銀行が手を取り合うことで、
地域が持つ未来の可能性は
果てしなく広がっていく―。
そんな希望を抱くことのできるお話でした。
今後もしずおかフィナンシャルグループ
では、
サステナビリティ経営を行う
地域企業への支援を続けてまいります。